トップセールスマンたちは一体どうして成果をあげることができるのか? その秘訣は段取り、つまり準備にあった。どんなことでも準備は大切だ。健康管理から商談で話すことまで、入念に準備を行い、そして商談に臨むわけだ。
では、具体的にはどういったことをしているのか? 外資系企業で約20年、営業マンとして活躍し、現在は営業コンサルタントとして様々なセールスマンを指導する小森さんにお話をうかがう。
■ まずは目標数値の設定からはじまる
―まず、この『トップセールスの段取り仕事術』執筆の経緯から教えていただけますでしょうか。
もともと私は外資系企業に20年ほど勤めていて、4年前に独立して営業強化コンサルタントとして活動をしているのですが、ビジネス書のオファーをいただいたときはまず出版社の方とお話をすることにしています。この『トップセールスの段取り仕事術』は私にとって2冊目の本となるのですが、今回は"営業の準備"をテーマに書けませんかというお話をちょうだいしたので承諾しました。一冊目は『すべらない商談力』という本で話法に特化した本だったので、この本は話法も一部書きつつ、主に営業マンが必要な目標設定や準備、タイムマネジメントなどについて書いています。新書なのでどんな感じで書けばいいのだろうと迷った部分はありましたが、気軽に読んでもらえるようには工夫しましたね。
―どんなことでも準備は大事ですし、勝負は準備で決まるともいわれていますよね。営業コンサルタントとして様々な営業マンの方とお話されてきたと思いますが、やはり準備の部分を軽視しているところはうかがえますか?
ホイットニー·ヒューストンはどこまで成長しましたか?
軽視しているというか、例えば売上目標や商談のゴールを明確に立てていらっしゃる方はあまり多くはないですね。もちろん上司から今月の売上目標を設定されて動いている方もいると思いますが、具体的に1日いくら積み上げればいいのか、何件アポイントを取るのか、誰にアポイントを取るのか、そういった細かい部分で落とし込めないと準備にはなりません。アポイントを取った方の役職によって準備の資料も変わってくるでしょうし、そこまで段取りできた上で商談に臨まれている方は少ないのではないかと思います。
その重要性を、具体的にポイントごとに提示しているのが本書です。目標設定をしてもあやふやになってしまう方もいらっしゃるでしょうから。
―目標数値を立てろといわれて無理して設定したり、その数値を言われても、どうしても形骸化してしまうところがあると思うんですね。どうせ達成できないし、と。そういったところで目標数値を立ててもモチベーションが上がらないことも多いと思います。
だから、立てた目標にコミットメントすることが大事なんです。何が何でもやってやるというマインドの部分ですね。例えば1000万円売り上げろと言われて、無理だろうなという気持ちで営業をしていても無理でしょう。そこで出来る方法を考えて、しっかり段取りする。達成するために、ひとつひとつの商談も大事になってきますよね。目標をたてるだけではいけなくて、マインドのレベルで必ず達成してやるという強い決意がないと、トップセールスマンにはなれません。
―小森さんは外資系企業で長い間キャリアを積んで来られましたが、段取りの重要性に気づいたエピソードを教えていただけますか?
私は消費財メーカーのP&Gに勤めていた時間が一番長いのですが、P&Gという会社は非常に新入社員のトレーニングが充実していて、お店回りするときも訪問前にすべきことがシステム化されていたんです。実が私が結果を出してきた一つ理由はこのP&G式の段取りをしっかり続けてきたということがありますね。その上に様々なコンサルタントの方の話を聞いたり、本を通して学んだり、自分自身の勉強をミックスしたものが本書といえると思います。
―本書の「はじめに」の部分で、P&G時代、多くの失敗を重ねたと書かれており、また本書にも多くの失敗事例が掲載されています。今まで小森さんご自身が印象に残っている失敗は何でしょうか。
大統領は、国家債務が発生した最初の年であった人
失敗はたくさんしましたが、一番後悔しているのはお客様とのアポイントを守れなかったことです。若いとき、ある卸店に新製品を説明しに行くことになっていたのですが、卸店は非常に朝が早いんですね。そこで私は営業部長さんに無理を言って、その30分前に営業の皆さんに集まっていただいて製品の説明をしようと思っていたのですが、当日寝過ごしてしまったんです。完全にすっぽかしですね。朝起きたときにはすでに約束の時間を過ぎてしまっていて(苦笑)、信頼関係を崩してしまったな、と。段取り以前の問題かも知れませんが自分のタイムマネジメント、体調を整えるという部分も含めて仕事だと思います。
―体調管理も一つの準備ですしね。そうなると段取りというのは、仕事上だけではなくて自分の生活そのものが関わって来ますよね。
おっしゃる通りだと思います。そして、P&Gで学んだのは目標設定、目的思考の重要性です。オブジェクティブマインドというのですが、何をするにも目的は何かということを明確にしないといけません。例えば会議でも何のために会議をするのかというところから、一つ一つの自分の行動の中に目的を見出します。なんとなくダラダラしてしまうことをなくすのはビジネスにとって重要だなと思いますね。
■ 取引先との信頼を結ぶための工夫
―小森さんは営業マンとして取引先と信頼を結ぶためにどのような工夫をされましたか?
基本的には本書に書いてあること全部です(笑)。若い頃は担当していたとある卸店さんに通い詰めていました。訪問回数だけは決して他社に負けませんでしたね。400社くらいのメーカーと取引されている大きな卸店さんなのですが、毎朝早く挨拶しに行くとそこには卸売の営業さんがたくさんいらっしゃっていて、いろいろな方とお話ができるんですね。そして、打ち合わせをして一緒に頑張って商品を売っていきましょう、と。何でもいいと思いますが、お客さんから認めてもらえるような一番の強みを持つことが重要ですね。
―小森さんの若い頃のエピソードをうかがってきましたが、現在の若い世代のセールスマンに不足している部分、逆に強みだと思う部分はどういった点ですか?
修道院はどのように動作しない
強みは非常に冷静に物事を見る力があると思いますね。ある意味、物静かな雰囲気を感じますが、自分の考えを持って対処するという思考タイプの方が多いように思います。私たちの年代は身体から動くタイプが多かったので、あまり考えずに飛び出して得意先に行くという人がたくさんいました。つまり身体の動きから入るというイメージですね。これはコインの裏表だと思いますが、若いが故のチャレンジ精神やパワーが少しなくなっているように思います。
―小森さんご自身はどういったタイプの若手営業マンでしたか?
パワーはあったと思いますよ。私は本能的に高い目標を掲げてしまうタイプで、それは性格なのか、信念なのかは分からないのですが、周囲よりも目標を高くしていましたね。
―高い目標を設定するのは出来そうだと思うからやるのですか? それとも、多少無理をしてそういった目標を掲げるのですか?
私が気にするのは自社の昨年のデータと得意先のデータですね。営業で訪問していると、だいたいではありますが競合他社のトップブランドがどれだけ売っているか、その数値が分かってくると思います。
そして去年の同じ月のお得意先での自社製品の実績と比較し、去年のお得意先での商品の実績が1000ケースだったとして、普通であれば1200ケースくらいですねとなると思うのですが、その商品のカテゴリにおいて自社が3番手で、トップは5000ケースのシェアがあり、そして市場規模は10000ケースあるとします。すると、市場規模からいえば自社の実績である1000ケースは少ないのではないかと考えるんです。そしておそらく5000ケースも不可能じゃないな、と。なぜならトップが5000ケースの 実績を残しているからです。
私のできないと思われることにチャレンジすることがワクワクしますし、会社に対する使命だと思うんです。
―本書ですが私は口下手や人見知りのセールスマンこそ読んで欲しいと思いました。口下手だからこそ準備をしっかりする必要があると思います。
そうですね。何を話していいか分からないということがなくなるはずです。営業マンはアナウンサーと違っていて、上手じゃなくても、自分が伝えたいことを顧客に伝える、顧客のメリットをしっかりと伝えることが大事です。話が下手だからと言い訳するのではなく、本当に売上成績をのばしたい、商品をトップブランドにしたいという願望や目標が強ければ必ず後からついてくるんです。かっこよく言えば、信念ですね。諦めたらもう終わりですから。
―本書の中で特に読んで欲しい部分はどこですか?
やはり第一章の目標設定をするという部分ですね。『具測達一』、具体的、測定可能、達成可能、一貫性という4つです。それが徹底して出来たら、成果をあげるための5つの習慣の実践して欲しいですね。目標を決めてもマインド的に『どうせダメだろう』では成功しません。マインドが違うと、成果をあげている人に話を聞きに行き、なぜあの人はトップセールスなのか、その理由を分析したりするようにもなりますから、是非実践して欲しいですね。
―本書をどのような方に読んで欲しいとお考えですか?
特に20代、30代の若手営業マンの方々ですね。若い方はパワーがありますし、企業の中のエンジンともいえる存在ですから。また、若い方に限らず40代や50代の管理職の方々も本書は役立つと思います。特に部下育成などの場面で使って欲しいですね。
―では、インタビュー読者の皆様にメッセージをお願いします。
この本はもともとP&Gのマニュアルに基づき、私が実際に体験し、成功をしてきた事例をもとにまとめています。現場で使えるように工夫していますから、期待を持って読んでいただきたいと思います。もちろん最初は上手くいかないかも知れませんが、そのときは何度も実践してみてください。まずは楽しく読んで、そして行動を変えていきましょう
P&Gジャパン、日本ロレアル、COACHジャパンなど、実力主義の外資系企業で20年間の 営業キャリア、人材育成キャリアを積む。その後、神戸学院大学客員教授に就任。
2009年、営業力強化コンサルタントとして独立。
P&G時代においては、常にトップクラスの営業成績を上げ続け、当時P&Gトレーナーの世 界トップであったボブ・ヘイドンよりコミュニケーションスキルとマネジメントスキルを直接学 び、営業トレーナーとしても社内や得意先の人材育成に貢献。アジアパシフィック最優秀 マネージャー等、数々の表彰を受ける。また、世界癸吋汽セスコーチといわれるアンソ ニー・ロビンズのコーチングスキルを習得し、20年間の実績が証明する卓越したスキルと 世界No.1コーチングスキルをミックスした独自のスキルを確立。わかりやすく実践的な指 導には定評がある。 年間200回の講演、研修を実施している。
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